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切通理作
2011.5.28 00:05

日本人の<労働観>

  この間の道場『新日本人に訊け!』が終わった後、帰りのタクシーに私も便乗させて頂いたとき、「道場でも、語らいタイムでも言おうとして飛んでしまいましたけど、あの話はすべきだったかもしれません」と私が言ったら、「そうですね。その話は私もしたかった」と堀辺先生もおっしゃられたことがあります。

  それは呉善花さんの著書にあった日本人の<労働観>のことです。
  韓国には労働が美徳だという考え方がない。むしろ高貴でない者がすることだと蔑まれる。
  
  呉さんによれば、日本人一人一人に会うと「仕事辛いよ。遊んで暮らしたい」と口では言いますが、そういう風には見えないと。
  どうも日本人は、働いて、何かの役に立っていることそれ自体に喜びを感じているようだ・・・。

  ここは、目から鱗が落ちた部分です。
  意識の上では、できれば楽したいと思っているし、そういう風に口にもする。
  でも本当は、労働ということと切り離されたところに本当の喜びはないことにも気づいている。
  そんな我々の姿を、見透かされたような気がしたのです。

  そして、呉さんによれば、韓国にはそういう心性が希薄なのだということにも驚かされました。
  日本人としての特性を、人間であるならば当たり前のこととして無意識に受け取ってきたような気がします。

  しかし、むろんこうした認識を単に自己慰撫に使うということではなく、いままさに失われつつあるものとして、捉え返すことが重要でしょう。

  グローバリズムに呑みこまれ、たまさかギャンブルで勝った者がそれ自体賞賛の対象になるような国に、日本をしてはならない。
  そう改めて決心した次第です。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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